ドラゴンボール超/未来トランクス編・ブラックシナリオ3

〈未来トランクス編〉

ブラックシナリオ3

【滅する未来世界、その過程】

タイムラインB

主眼:トランクス

未来トランクスの世界 ―。

「ふぅ。…かなり復興も進んだな。人造人間らが破壊した街も、漸く活気が戻ってきたし…」

世界そのものの立て直しの為、トランクスは身を粉にして尽力していた。

また、母であるブルマも、新たな発明を行い、以前よりも更なる発展を願っていた。

だが、世界人口の観点では、以前に比べ、3割程しか存在していない。

ドクター・ゲロによるダメージは、まだまだ根が深いものといえた。

そんな折である。

「あなたが、トランクスさん…ですね?」

カプセルコーポレーションに、ふたり組の人物が訪ねてきた。

小柄の人物に、その付き人と思わしきガタイの良い者の、ふたり組である。

ただならぬ雰囲気を漂わせてることから、警戒するトランクス。

「は…はい。トランクスは…オレですが(何だ…?気が…読みきれない…??)」

「私は…まぁ、隠す必要もないでしょう。名は、『シン』と申します。後ろの者は、『キビト』でして、私の付き人をしております。どの程度までの『神格』をご存じかは解りませんが…私は、この宇宙を統べる『界王神』を務めております」

「…か…界王神…さま?」

一見、ただのおふざけのように思われるが、その佇まいと纏った気配から、トランクスは直ぐに納得した。

「それで…界王神さまが、その…どのような用件で…」

心配そうに様子を眺めているブルマ。

「…少し、外に出られますか?話は、それからで…」

シン、キビト、トランクスは人気のない場所へと移動した。

「魔導師!?」

界王神・シンの話に、トランクスは困惑した。

確かに、人造人間だの、細胞を核とした生命体だのを敵にしてきたワケだが、流石に『魔導師』とは、おいそれと受け入れられるはずがない。

「はい。ただ…『魔導師』などの肩書きでは推し量れない程、恐ろしい力を秘めています。多分、魔力をもってして、強力な配下も連れて現れるでしょう…」

こうなってくると、目の前にいる『界王神』と名乗る人物も怪しく思えてくる。

「魔導師…ですか。それは、こんな俺の力でも倒せないほど…ですかね?」

トランクスが気を込めると、全身を金色のオーラが包み、逆立つ髪や瞳も、金色の輝きを放った。

もう説明は不要だが、超サイヤ人へと変貌したのである。

「流石は、トランクスさん。サイヤ人の血を引いているとはいえ、『人間』のレベルを大きく逸脱している…。しかし、それではセルは倒せても、魔導師バビディには歯が立ちません」

そんな言葉を聞いてか、超サイヤ人化し、気が昂ったトランクスは、微笑み、言い放った。

「…では、試してみましょうか?」

構える間もなく、気を溜め放つ。

「ハアッ!!!」

放った気が、シンとキビトを直撃した…はずだった。

「…っ!??」

シンは、ただ片手を前に差し出しただけであり、キビトに至っては、微動だにしていない。

「…確かに、『強さ』…あなた方の言葉を借りれば、『戦闘力』は、私たちより、トランクスさんの方が上でしょう。しかし…」

今度は、差し出した腕を、すっと下げるシン。

それと同時に、トランクスは両膝を地に着けた。

「…本当の『強さ』や『力』とは、あなた方、人間の想像を超えるものなのです」

シンがトランクスの動きを封じたのは、『超能力』や『術』、『技』などとは異なる『力』であった。

シンがその能力を解くと、トランクスの体は普段と変わらず、自由となった。

「…」

「まぁ、この程度なら、人間でも身につけることは可能でしょう。しかし、それ以上に恐ろしい力もあるのです。界王神である私でなくとも、魔導師バビディであれば、もっと様々な力を使ってくるでしょう…」

すべてを悟ったワケではないが、トランクスは、シンが今まで話したことが、すべて真実であったと理解した。

「魔導師バビディの目的は、何なのですか!?また、世界征服とか…そんなところでしょうか!?」

トランクスの問いに、シンは少し考え込んだ。

「…いえ。地球という惑星に現れるのは、あくまでも『人間』というエネルギー体が多く存在しているからです。そしてヤツは、集めたエネルギーで、もっと、もっと、恐ろしい存在を復活させようと目論んでいるのです…」

シンは敢えて、何を復活させようとしているのかを伝えなかった。

いや…伝えることに、何の意味もないことを知っていたからである。

「…いいですかっ!?ヤツの目的を、確実に防がなくてはなりません!それは、どんなことをしてもですっ!!その為に、あなたには今から、更なる力をつけてもらわなくてはなりませんっ!!」

困惑するトランクスだが、瞬時に覚悟を決めたようだった。

その決意の表情を読み取り、シンは決断した。

「では、早速…。カイカイッ!」

シン、キビト、トランクスの3人は、界王神界へと旅だった。

界王神界での修行は、トランクスの想像を遥かに超え、厳しいものだった。

ただ闇雲に強くなればよいものでもなく、またトランクスは、既に戦闘力の上限の壁を感じていたからである。

しかし、シンやキビトの師事を得て、更なる高みへと登り詰めてゆくトランクス。

修行のなかでも、一番の難関は、『ゼット・ソード』と呼ばれる剣を使いこなせるようになることだった。

尋常ではない重さがあり、超サイヤ人となったトランクスでも、突き刺さった地面から抜き取ることができないほどであった。

月日が流れるなかで、そんなゼット・ソードを抜くことができ、何とか使いこなすことができるレベルに到達したトランクス。

「…ふむ。修行もそろそろ、終盤といったところか。トランクスよ。人間でありながら、よくぞここまで成長したな…。では、最後の修練として、この宇宙で最も硬いとされる、『カッチン鉱』を…」

「ま…待ってください!!」

シンが遮る。

「ま…魔導師バビディが…予想よりずっと早く…地球に現れたようです…!」

「え…っ!?そんな…」

「す…すみません…。私も、まさか、こんな早いとは思わず…。正直、いつ現れたのか…。兎に角、急ぎましょう!!」

こうしてトランクスは、修行を完全に終えることなく、魔導師バビディとの決戦を迎えることとなった…。

トランクスたちが地球に戻ると、人間の気配が極端に減少していた。

「トランクスさん…申し訳ありません…。バビディが現れてから、既に幾ばくかの時間が過ぎてしまっていたようです…」

バビディの気配を探るシンとキビト。

「…すみません。バビディとの闘いの前に、ひとつだけ確かめたいことが…」

トランクスは全速力で飛び立った。

ゆく先は…カプセルコーポレーション

母である、ブルマの生存を確かめる為である。

トランクスに続き、シンたちも間髪入れず、カプセルコーポレーションへと到着した。

「母さんっ!!」

研究室へと駈け込むトランクス。

運良く、まだ西の都は攻撃を受けておらず、また、ブルマも無事だった。

「トランクスッ!?よかったわ…。急にいなくなって…しかも、数日前から、妙なヤツが現れて、次々と人が襲われ始めたのよっ!!…あれっ?後ろにいるのは…」

「すみませんでした、母さん…。実は…」

トランクスは経緯を説明した。

「…そう。じゃあ、今、地球上で暴れているのが、その『魔導師バビディ』…とかいうヤツなのね?」

「はい。そして、その手先として動いているのが、『ダーブラ』という魔界の王なのです」

シンは既に、バビディの配下の存在も感じ取っていた。

ダーブラ以外にも、何匹かの遣い魔がいますが…。私を含め、トランクスさんの足元にも及ばない程度でしょう…」

「… … …」

シンの言葉を聞いてか、聞かずか…、ブルマは少し考え込んだのちに、口を開いた。

「えっと…界王神さま…でしたっけ?『もしも』の話…ですけど…。もしも、この闘いでトランクスが破れて、バビディのヤツが野望を叶えてしまったら…」

「…その時は…『それまでだった』と、言うまで…です」

「いや、いや、いやっ!『それまでだった』じゃないわよっ!!だって、界王神の世界も終わっちゃうんでしょっ!?それって、アナタが管理してる宇宙全体の終了を意味してるんじゃあないのっ!!?」

界王神さまに向かって、人間の分際で、何という口利き…っ!!」

ブルマの口調に、キビトが口を挟むも、それを遮るシン。

「いいのですよ。キビト。…確かに、この宇宙の崩壊へと繋がる、由々しき事態…。ですが、いち宇宙の命運とは、そういうものなのです。『為るべくして為る』…。界王神とて、宇宙そのものの運命を変えることなど、できないのです」

「… … …」

ブルマにとって、宇宙の運命などどうでもよかった。

そんなことよりも、トランクスを失うことが何よりも恐ろしかったのである。

「…そうだ!ドラゴンボー…」

ドラゴンボールは、超法規的措置です!」

シンは、ドラゴンボールというものがどういったものか、その成り立ちから説明した。

遥か昔、太古の時代 ―。

宇宙全体で、生命体がまだ数少ない頃のこと。

当時はまだ神々が、人間界と密接な関係を持ち、それなりの干渉をしていた。

神々は、時に人間に指南を与え、時に共に考えることもあり、言葉を交わすことも多かった。

そんななかで特段、優秀で温厚な『ナメック星人』は、ある種、神々に近い力を備えていた。

更に、偶発的とはいえ、『とある神』が所持する能力と同様なものを、ナメック星人は持っていた。

そこで、宇宙の今後の発展に期待を込めて、『その力』の使い方を教えたのである。

それが、『ドラゴンボール』であり、ナメック星人のなかでも、ほんのひと握りの者だけが、ドラゴンボールに関する力を発揮することができたのである。

「…ただし、ドラゴンボールを生み出すことも、使用することも、あくまでも『人間界』という枠組みのなかで許容されるもの…。私には、その力はありませんし…そもそも、界王神とは、『無から有を生み出す者』なのです。ですので、死者を甦らせることもできません…」

シンは、伏せ目がちに言葉を続けた。

「…闘いの前に、あなた方の期待を裏切るような言葉は避けたかったのですが…。事実は変えられませんので…」

肩を落とすブルマ。

「…そう。それじゃあ、仕方がないわよね…。死者の復活が可能なら、きっと既に、孫くんやベジータを生き返らせているだろうし。解ったわ…。界王神さまたちにとっても、決死の闘いなんでしょう…?」

シンは、こくりと頷いた。

「…じゃあ、トランクス。絶対の絶対に…無理はしないことっ!!あなたがいなくなったら、もう取り返しがつかないんだからねっ!?いざとなったら、界王神だろうと、何だろうと、見棄てて逃げなさいっ!!」

またまたキビトが激昂したが、シンはただ、苦笑するだけだった。

こうして、『最終決戦』ともいえる闘いに、シン、キビト、トランクスは挑んでゆくのであった。

飛び立つトランクスの姿を見送るブルマ。

だが、その胸のなかには、何か大きな引っ掛かりを覚えていたのであった。

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