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とあてあみ おとこのこのみ うみのこえ(意味なく五七五)

いつものいつもな休日。

 今日は映画の予定を午後からしか入れていなかったので九時半まで惰眠をむさぼり、おもむろに梅田へ。

 とりあえずシネ・リーブル梅田で二本。

 まず『アンチポルノ』から。

 http://www.nikkatsu-romanporno.com/reboot/sp/antiporno/

 園子温監督最新作。にっかつロマンポルノリブート企画の一作で、低予算と女の裸さえ出せば何でもありという条件を逆手にとって、園監督が気ままにやりたい放題のことをやっている、という趣きの一品。

 高慢ちきなマルチタレントの冨手麻妙(←これで、とあてあみ、と読むそうな)が壁も床も黄色に塗りたくられた部屋(トイレは壁も床も真っ赤で何故か巨大な換気扇が付いている)でマネージャーをいたぶったり、インタビューに訪れた雑誌編集長やカメラマンに言いたい放題のことを言ったりといったアングラ劇が綿々と繰り広げられるかと思いきや、映画が始まって三十分も経ってからそれが撮影中の映画の一場面であることが判明し、そこから登場人物の立場が逆転する。その映画からさらに劇中劇が始まったり、最初の方で主人公が壁に映し出していたブルーフィルムまがいの映像が実は、なんて構成が凝っていて、その展開の中でいかにも園監督ならではの狂気が浮かび上がってくる。

 園子温監督のファンなら見逃してはならない怪作。

 続いて『家族の肖像』(一九七八)をデジタル修復版で再見。

 http://www.zaziefilms.com/kazokunoshozo/

 二十年くらい前に心斎橋パラダイスシネマ(現シネマート心斎橋)で観て以来久々の再見。

 今回観直して感じたのは、編集が驚くほどすっきりして無駄がないこと。ヴィスコンティの作品は、得てして重厚長大で無駄に一場面が長く、くどさを感じさせるものが少なくないのに、この映画は内容のコンパクトさもさることながら、編集の切れもよく、ヴィスコンティにしては短いショットがきめ細やかに組み立てられている。ヴィスコンティ嫌いの私が二十年前でも素直にこの作品を受け入れられたのは、そうした側面もあったからなのかもしれない。

 もうひとつ琴線に引っかかったのは、映画の後半で徐々に浮かび上がってくる、家族内の政治思想のずれの問題。この辺は貴族の出でありながら若い頃は共産党員でもあったヴィスコンティ個人の経歴も反映されているのだろうが、私自身も大学時代、左翼の連中に振り回されてうんざりしていた経験があったものだから、二十年前には余計に生々しく感情移入して見入っていたのだろう。

 ところで数日前にこの映画を観に行って感想を書いていた友達さんがいて、私より年配の方なので「老境での渇望とか悔恨というのは、この歳になると、ほんとうにきつい話だ」と書いていらした。私はまだそこまでの年齢ではないのでそうした点は感じなかったのだが、また何十年後かに観直したら別の感想を持つのかもしれない。

 そういやその方がこの映画のヘルムート・バーガーを「美青年という前に、どうしても北村一輝を思い浮かべてしまう」と書いていらしたのだが、私が観ていて連想したのは、『若者のすべて』(一九六〇)のアラン・ドロンだった。こうしてみると、ヴィスコンティの男の好みは老境に達しても変わらなかったとみえる(笑)

 次の映画まで時間があったのでかっぱ横丁の古本街やまんだらけなどをちょっと回り、早い目の晩飯を、やよい軒の期間限定メニュー「鶏もも一枚揚げ定食」ですませる。皮までパリッと揚げられていて美味い。にんにく醤油とおろしポン酢の二択なのだが、にんにく好きの私は当然にんにく醤油バージョンを選ぶ。とろっとしたしょうゆだれが肉に合っていて、あまったしょうゆをご飯にかけるとこれだけで二杯分いける(笑)

 

 

 最後にTOHOシネマズ梅田で『モアナと伝説の海』を2D吹替版で。

 http://www.disney.co.jp/movie/moana.html

 南洋の島で村おさの娘として育った少女モアナが海の精に気に入られ、かつて伝説猛者マウイが盗み出した海の女神の心の石を元の位置に戻す役目を託される。父から遠洋に出ることを固く禁じられていたモアナだったが、祖母に後押しされて独りで海に漕ぎ出し、孤島に封じられていたマウイを探し当て、女神の島へと向かう、というお話。

 展開は型通りで新味はないし、二時間内に話をまとめるためにかなり駆け足な進行になっているきらいはあるのだけれど、ディズニーアニメらしく嫌味のない展開で、それなりに楽しんで観ていられる。マウイの体中にめぐらされた刺青が意思を持つように動き回り、状況説明をしたりマウイの内面の感情描写をしているなんて設定はアニメならではのものだし、ココナツの実の精のような海賊団が二人に襲いかかる場面なんかなかなかの見せ場。クライマックスの溶岩の化け物との闘いも迫力たっぷりだし、心の石を納める場所が実は、というアイデアも捻りが効いていていい。あと、エンドロールの後の「俺がお姫様に仕えるセバスチャンっていう名前の赤い蟹だったら助けてくれるんだろ!?」という楽屋落ちには笑った。

 私は2D版で観たのだけれど、これ3Dだったらもっと凄い見せ場だったろうなと感じる場面が少なくなかった。上下左右に画面を広げることのできる海洋を舞台にしたお話ならではの絵作りで、こういうところ、ディズニースタッフは本当に上手いなあ、と思う。観に行かれる方は3D版で観ることをお薦めします。